大国様に衣装を着て頂くプロジェクト

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新たな挑戦

京都にある杉長ホテルに鎮座されている大黒様に、1000着近くの衣装を持っているという、
ベルギー・ブリュッセルのしょんべん小僧
のように衣装持ちになって頂こう!
という企画の第一弾として、京都の、とあるコンサルティング会社よりお話をいただきました。

杉長ホテルにおられる大黒天様は、木の温もり感じる見事な仏像です。
衣装を着なくても立派な木彫りの大黒天様に、あえて衣装を着せるという事は、
「衣装を着ていない仏像の方がいいよね」と言われてしまう可能性が大いにあるという事です。
そうなってしまっては本末転倒で・・・

私にとって新たな挑戦だと思い、このオファーを受けることにしました。

プランを考える

2025年のお正月に初お目見え!ということで、
おめでたい日に合わせてプランを考えました。

背景と目的

大黒天は、日本における七福神の一柱で、主に「福の神」「豊穣の神」として信仰されています。その由来は、インド、中国、日本のそれぞれの文化が融合した結果として成立したとされています。しかし、現代社会ではその認知度が限定的であり、新しい視点やアプローチを取り入れることで、その魅力を再発見する余地があると考えました。
そこで、大黒天の伝統的なイメージを維持しつつ、現代的な解釈や美的要素を取り入れながら、京都らしさを大切にし、観光・文化の活性化を図ることを目的としてプランを考えることにしました。

コンセプト

「時代を超える繁栄の象徴」

伝統的なシンボリズムを大切にしながら、仏像と衣装デザインの融合を目指す
宗教的価値だけでなく、文化財としての新しい魅力を国内外の幅広い世代に訴えかける

象徴と特徴

  • 打ち出の小槌: 富と繁栄を象徴する道具
  • : 財宝や食糧を入れた袋で、福を運ぶとされている
  • 米俵の上に立つ姿: 五穀豊穣を表す象徴
  • 黒い衣装と帽子: 起源である「マハーカーラ」の名残を反映

衣装デザイン

以上を踏まえて4パターンデザインし、こちらのデザインに決定!

素材は、担いでいる袋の素材以外は、ポリエステルながら全て西陣織。
おめでたい吉祥紋様で構成しました。

パターン

どこをとっても非対称のボディ。
シーチング1でドレーピング(draping)2し、パターン化していきます。
この工程に今回かなり手こずりました!!

  1. シーチングとは?
    シーチング(綿布とも呼ばれる)は、薄手の綿生地のことを指します。一般的に、漂白されていない生成り(きなり)色で、シンプルな織り方(平織り)で作られています。 ↩︎
  2. ドレーピング(Draping)とは、トワルや布を直接ボディ(ボディ=立体的なマネキン)にかけて形を作りながらデザインする洋服作りの技法です。「立体裁断」とも呼ばれます。 ↩︎

フィッティング

二人がかりでフィッティングを行って行きます。

完成!!

こだわりポイントは、木目の合皮で作った左手

当初、クライアントからのオファーは、マントの様にバサっと被せる様な形状でとの事でしたが、これでは私自身到底納得できるものに仕上がらないと思っていました。

大黒天の右手はかろうじて腕を通せる隙間があったのですが、左手は隠れてしまい、大黒天のシンボルでもある財宝が入った袋を表現できないのです。「どうするべきか・・・?」

そこで、左袖を後付けし、左手が袖から出ている様なデザインにする方法を考えました。
「もしかしたら、木目の合皮が木像の素材と近いかもしれない・・・」
思惑通り、違和感なく馴染んでくれた。
万歳!!!
当初難色を示していたクライアント様にも笑顔が溢れたのを確認でき、肩の荷がおりました。
ホテルに訪れるお客様にも喜んで頂いているとのこと。ホテルに訪れるすべての人に、
大黒天様のご加護がありますように

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